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考察編 その2 by Hiroyuki


童話「やまなし」に関する一考察


「やまなし」は、大正12年(1923年)4月8日付の岩手毎日新聞に掲載された物語である。
なんと言っても、興味深いのは「クラムボン」という語であろう。
子供のカニの兄弟の話の中に、「クラムボンは、わらった。」とか「クラムボンは、死んだ。」といった表現が
なされている。また、「クラムボンは、殺された」といったショッキングな言動もある。
例えば、我々人間の場合を考えてみても、幼い子供達が話す事柄の内容に大人達が耳を傾けたとしても
どれだけの内容を理解できるであろうか。
作品全体においては、この「やまなし」所収の新潮文庫版「新編 風の又三郎」中の天沢退二郎氏の解説
にもある通り、「晩春と初冬」、「昼と夜」、「花びらと実」といったように、対照的な表現がなされている。
筆者が思うに、「クラムボンは、わらった。」と「クラムボンは、死んだ。」といった表現(前者は幸福的な状
態、後者は悲劇的な状態)もある種、対照のリズムを醸し出しているのでは、なかろうか。

「クラムボン」の正体に関する説は数多い。初出の掲載紙に「クラムポン」という表現も混在した為、文圃堂
版全集以降、「クラムポン」に統一され、英語のCrampon(つかみ金)、Cramp(かすがい)の連想から、
その正体は「アメンボ」という説が出されたが、下書き稿では全て「クラムボン」になっていた為、以後の全集
において「クラムボン」の表現に統一された。
他にも、水生小生物説(恩田逸夫氏ら)、Crab(英語でカニの意)からの連想説(小沢俊郎・続橋達雄氏
ら)、カニの吐く泡説「前述Crab(カニ)+Bomb(泡)」、光説等々、現在まで様々に論じられている。
(詳細は、Webサイト「賢治/やまなし」に網羅。サイト名で検索すればすぐに出る

童話「やまなし」の成立に程近い時期、賢治は生前唯一刊行した詩集「春と修羅」の創作過程にあった。
筆者が思うに、「クラムボン」の語の意味、作品全体の意図は、この「春と修羅」にそのヒントがあるようにも
感じられる。
安易に「クラムボン」の語の意味をイコール「何々」であるとかとらえるよりも、賢治作品全体を通じて体感す
るのも、賢明な読み解きであると思うが、いかがだろうか。

尚、英語の辞書を眺めていたら、「クラムボン」に発音の似た語を見つけた。
「Cram−bo」
意味は「韻探し」(相手の言った語と同韻の語を考え出す遊び)だそうである。



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